INSPIRE LAB GROUP、中東最大のメディアイベントArab Media Summit 2026に参加

Audience at Arab Media Summit 2026

*写真:アラブメディアサミット公式サイトより

AI時代、メディアに問われる信頼と人間の役割

INSPIRE LAB GROUPは、2026年9月15日から17日までドバイで開催された「アラブメディアサミット 2026」に参加しました。

政府関係者、国際メディアの経営者、ジャーナリスト、クリエイター、テクノロジー専門家などが世界各地から集まり、メディア産業の現在と未来について議論した3日間。

会場では、AI、ジャーナリズム、政府コミュニケーション、映画、ゲーム、ポッドキャスト、SNS、クリエイターエコノミーまで、現在のメディアを取り巻く幅広いテーマが取り上げられました。

そのなかでも、繰り返し議論の中心となったのが、AIによってメディアはどう変わるのか、そして、その時代に人間は何を担うのかという問いでした。

AIが変える、メディアの前提

生成AIの進化は、メディア産業の構造そのものを変え始めています。文章を書く。画像や映像をつくる。翻訳する。情報を分析する。個々のユーザーに合わせてコンテンツを届ける。これまで多くの人員と時間を必要としてきた作業が、AIによって急速に効率化されています。

今回、Dubai Press Clubとデロイトが発表した「AI時代のアラブメディア」でも、AIは単なる制作支援ツールではなく、コンテンツの制作から流通、オーディエンスとの接点、収益化まで、メディアのバリューチェーン全体を変える存在として位置づけられています。

しかし、今回のサミットで興味深かったのは、議論が「AIで何ができるのか」だけに終始していなかったことです。

むしろ、その先にある問いが浮かび上がっていました。

AIによって誰もがコンテンツをつくれる時代に、メディアの価値はどこにあるのか

「つくる力」から「信頼される力」へ

AIによる文章、画像、映像、音声の生成が日常化するにつれ、情報の量はさらに増えていきます。同時に、本物と生成物の境界は曖昧になり、情報源や事実関係を見極めることは、これまで以上に難しくなります。

だからこそ重要になるのが、本質・信頼・責任です。

誰がその情報を発信しているのか。

どの情報源に基づいているのか。

事実と意見は明確に分けられているのか。

そして、発信する側がその内容に責任を持っているのか。

AI時代のメディアでは、情報を速く、大量につくる能力以上に、「何を信頼できる情報として社会に届けるのか」を判断する編集力が、より大きな価値を持つようになるでしょう。

それでも、人間にしかできないこと

もう一つ印象的だったのは、AIについて語れば語るほど、議論が最終的に「人間」に戻ってくることでした。

AIは膨大な情報を整理し、文章や映像を生成することができます。しかし、現場へ行き、人に会い、その人が発する言葉だけでなく、表情や沈黙、文化的背景、その場の空気まで受け取り、「なぜこの出来事が重要なのか」を考えることは、ジャーナリズムの根幹にあります。

事実を集めることと、事実の意味を読み解くことは同じではありません。情報が溢れる時代だからこそ、文脈・視点・人間性の価値はむしろ高まっていく。

それは今回のサミットを通じて強く感じられた変化の一つでした。

メディアは、ニュースの枠を越えている

今回のアラブメディアサミットでは、従来型のジャーナリズムだけでなく、映画、ゲーム、ポッドキャスト、SNS、政府コミュニケーション、クリエイターエコノミーなどが横断的に扱われました。

ここにも、現在のメディア産業の大きな変化が表れています。

メディアは、もはや「ニュースを伝える産業」だけではありません。文化をつくり、人をつなぎ、社会の価値観を形成し、時には都市や国家のイメージそのものを世界へ伝えていく存在になっています。

特にドバイでは、メディア、AI、クリエイティブ産業をそれぞれ独立した分野としてではなく、都市の国際競争力を形成する一つの巨大システムとして育てようとする姿勢が鮮明です。

コンテンツは消費されるものから、国家の文化、経済、ナラティブ、そしてグローバルな影響力を生み出す資産へと変わりつつあります。

INSPIRE LAB GROUPが考える、これからのメディア

INSPIRE LAB GROUPでは、ドバイを拠点の一つとして、グローバルビジネス、メディア、クリエイティブ、ウェルビーイングなど、異なる領域を横断した活動を続けています。そのなかで私たちがメディアに求めているのは、単なる情報量や発信頻度ではありません。

世界各地の現場へ行き、人に会い、異なる文化や価値観に触れ、その背景を理解したうえで、今、伝えるべきことは何か。そして未来に残すべきものは何かを考えること。

AIは、そのための非常に有効なツールです。リサーチ、分析、翻訳、編集、映像制作、グローバル配信——テクノロジーを活用することで、メディアが国境と言語を越える可能性は大きく広がっています。

一方で、その中心にある編集判断までテクノロジーに委ねるべきではないと私たちは考えています。

弊社代表 桑田稜子、アラブメディアサミット2026にて
*写真:弊社代表桑田稜子、アラブメディアサミットにて。

ドバイから世界へ From Dubai to the World

アラブメディアサミット2026の3日間を通して見えてきたのは、AIによってメディアがなくなる未来ではありません。

むしろ、テクノロジーによって誰もが発信できるようになるからこそ、信頼できる情報を選び、文脈を与え、人間の視点から世界を伝えるメディアの役割が、これまで以上に重要になる未来です。

情報をつくること自体が価値だった時代から、何を選び、どう伝え、何を未来へ残すのかが問われる時代へ。

INSPIRE LAB GROUPは、ドバイ、東京、パリ、そして世界各地にもつネットワークを活かし、現場から得られる一次情報と国際的な視点を大切にし、人・文化・社会、そして未来をつなぐ事業ソリューションを提供してまいりいます。

The question is no longer simply what we can create with AI.
The question is what is worth telling and what is worth leaving behind.

もはや問われているのは、AIで何をつくれるかではありません。

伝える価値がある本物を、未来に残せるかどうか、です。

Ryoko Kuwata、INSPIRE LAB GROUP、SPACE FRONTIER、THE LEGACYのバナー